日本で昔から親しまれている代表的な花といえば、春の桜、秋の菊でしょうか。菊は観賞用だけでなく供花や、家紋のデザイン、皇室やパスポートなどの紋章にも用いられている花です。毎年9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」は、別名「菊の節句」といわれています。今回は菊の花と、伝統行事の歴史を振り返ります。
菊の歴史
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桜と同様、菊は日本の国花にもなっていますが、中国原産の植物といわれています。歴史書では8~9世紀、平安時代の「類聚国史」や「古今和歌集」に「菊」の記述が残っています。他説としては、奈良時代に編さんされた日本最古の和歌集「万葉集」に書かれている「百代草(ももよぐさ)」は、日本古来の菊のことかもしれないという研究もなされています。
国内に原種があったのか、または外来種なのか見解が分かれるところですが、自然の植物からみれば国境云々はあまり関係ないのかもしれませんね。古代から品種改良されてきた菊は、和菊としての歴史も深く、日本ゆかりのある花として親しまれていることに変わりはありません。
菊の種類

菊はキク科キク属植物の総称です。日本の菊は350種以上、世界には2万種あるといわれています。大分類として、日本で発展した多年草菊を「和菊」、欧米などで改良された菊を「洋菊」といいます。和菊は花の大きさにより「小菊」「中菊」「大菊」に分類され、開花時期によっても呼び名があります。
古代日本では宮廷の上流階級の間で親しまれた菊ですが、江戸時代に盛んに品種改良された「古典菊」が各地に普及。明治時代には、地域で菊花展や菊の品評会が行われるようになりました。菊といえば昔は白色や黄色が主流でしたが、今は様々な花色や形が楽しめるようになりました。
和菊
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- 大菊:花の直径が18cm以上になるよう、一茎に一輪を残して摘心し栽培されたもの。
- 中菊:花の直径が9~18cm。江戸菊、嵯峨菊、伊勢菊などの古典菊。伝統菊。
- 小菊:花の直径が9cm未満。八重咲き、ボンボン咲きなど、多種多様ある品種。
- 夏菊:5月から7月に開花。
- 夏秋菊:8月から9月に開花。
- 秋菊:10月から11月に開花。※一年で最も開花する時期
- 寒菊:12月から1月に開花。
洋菊
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- スプレーマム、ポットマム、ガーデンマム、クッションマムなど色や形、香りも多数。19世紀後半に日本の古典菊が注目され、欧米でもたくさんの品種が生まれました。和菊と似たものも多数あり見分けが難しいところです。
野菊
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- 日本の野生菊は存在しないと言われる一方、菊の生態に似た自生植物が国内で多数存在しています。それらを総称して「野菊」と呼び、山野草の花として親しまれています。
食用菊の効能
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菊の種類の中には食べることができる「食用菊」があります。お刺身などの飾りによく使われている食用菊(通称 タンポポ)ですが、飾りものだからといって食べない人も多いのではないでしょうか。でも実はもったいないことなんです。
菊は古くから観賞用だけでなく薬草として大切に食されてきた植物。健康長寿のために菊茶、菊酒、漢方薬などとして飲まれてきました。味は苦みがありますが、栄養素はビタミン類が豊富で、美肌やリラックス効果が期待できるそうです。
食用菊は主に花びらの部分を使います。刺身醤油に入れたり、お料理には野菜と合わせておひたしや酢の物、炊き込みご飯に散らせば見た目も鮮やか。天ぷらにすれば苦味のある部分もおいしくいただけます。日本酒や焼酎に菊の花びらを浮かべる粋な飲み方もおすすめですよ。スーパーなどお店で食用菊を見かけたら、ぜひご家庭の料理にも取り入れてみてください。
五節句と陰陽五行
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「五節句」に「菊の節句」があるのはご存じでしょうか。まず五節句について。年に5回ある節句といえば、七草粥を食べる1月7日、3月3日の雛まつり、5月5日の子どもの日など、季節の変わり目に行われる伝統行事のこと。
五節句は古代中国から伝わる「陰陽五行」から由来したもので、奇数(1・3・5・7・9)を「陽」、偶数(2・4・6・8)を「陰」とみる陰陽思想からきました。縁起の良い「陽」が重なる日は、足すと「陰」となり縁起が悪い日となるため、旬のものを食べて邪気を払う風習がありました。ちなみに1月1日の元旦は別格扱いのため、1月は7日になったようです。
五節句は江戸時代のころに日本では農耕の自然信仰と結びついて、五穀豊穣・無病息災・子孫繁栄などを願う神事へと変わっていったといわれています。五節句に行事食を食べてお祝いする風習もここからきています。
五節句
- 1月7日:人日(じんじつ) 七草の節句
- 3月3日:上巳(じょうし・じょうみ)桃の節句 ※ひなまつり
- 5月5日:端午(たんご) 菖蒲の節句 ※子どもの日
- 7月7日:七夕(たなばた・しちせき)笹の節句
- 9月9日:重陽(ちょうよう) 菊の節句
9月9日は重陽の節句
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五節句のひとつ「重陽の節句」は毎年9月9日にあります。別名、健康長寿を願う「菊の節句」、秋の実りを祝う「栗の節句」ともいわれます。
五節句の中ではあまりなじみのない「重陽の節句」ですが、平安時代は秋の収穫と共に祝う重要な日。「重陽節会」や「菊花宴」といって、和歌を詠い菊合わせをしたり、菊酒を飲んでおいしいものを食べて、盛大にお祝いをしていました。
本来は旧暦(太陽太陰暦)で行っていた9月9日は、今でいうと10月ごろにあたります。明治初めに旧暦から新暦になってから、あらゆる伝統行事の日程が旧暦か新暦かで揺らぐことになってしまいました。新暦で祝うと季節が1か月ほどズレてしまい、季節感や意味合いが薄れてしまうことも多いようです。なじみがなくなった「重陽の節句」もそのひとつかもしれませんね。
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現在の新暦9月といえば、菊はちょっと早いですが秋の食材の初物が出回り始めるころで、中秋の名月や敬老の日の時期にも重なります。収穫の秋に、栄養価の高い旬モノをいただいて健康を保つことは今も昔も同じですね。ひと足早く秋の味覚をいただきましょう。
【9月限定】重陽の節句のランチ・ディナー
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神戸須磨にある「神戸迎賓館」のレストランルアンでは、重陽の節句に合わせて秋の旬の味覚をふんだんに詰め込んだ特別ランチやディナーをご用意しております。お月見や敬老を兼ねたお祝いにもぴったりです。メッセージプレートやケーキ、お花束などのご用命もお気軽にご相談くださいませ。
● 【兵庫 須磨】LE UN(ルアン)神戸迎賓館
所在地:兵庫県神戸市須磨区離宮西町2-4-1
問合せ TEL 0120-210-289 VMG総合窓口(11:00~20:00)
公式サイト:https://www.vizcaya.jp/restaurant/
全国にあるVMGレストラン・ルアンでは、地場で採れた旬の食材を使った季節メニューをご用意しております。お祝いやアニバーサリーに、ぜひお近くの会場をご利用ください。
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