日本の夏の風物詩といえば夏祭り。七夕、盆踊り、縁日、花火大会など、楽しい行事が目白押しの季節です。今年はコロナ情勢も落ち着き、開催する意向のお祭りも増えてきました。
そもそもお祭りの目的って何?今回はそんな日本の「お祭り」について紐解いていきましょう。
自然信仰と八百万の神(やおよろずのかみ)
もともと日本には、古来より、あらゆる万物には神が宿る「八百万の神」という考え方があります。自然とともに暮らし農耕民族として生きてきた日本人は、太陽や雨雲、海、山、川、動植物など、すべてのものに神(人知を超えた大いなるもの)が宿っていると信じています。
春は豊作を願い種をまき、秋は実りに感謝して収穫する。自然の神々に五穀豊穣と健康や安全を祈ります。それが儀式・祭りとして人々の暮らしに根付き、世代を超えて伝わっているのです。
お祭りの起源「天の岩戸隠れ」
お祭りの起源は、歴史書の古事記(712年)にも「天の岩戸隠れ」という神話に記されています。
- 天の岩戸隠れ
アマテラスオオミカミは世を照らす太陽神。その弟にスサノオノミコト(海の神)がいます。スサノオノミコトは荒くれものでいつも周りに迷惑をかけてばかり。その様子にアマテラスオオミカミは心を痛めてしまい、岩戸の中に隠れてしまいます。太陽神のいない世は暗く災いの多い世界となってしまいました。困り果てた八百万の神々が話し合い、太陽神を招き出すために岩戸の前でどんちゃん騒ぎをしました。その楽しそうな様子に誘われて太陽神が出てきたため、再び明るい世を取り戻すことができました。
このどんちゃん騒ぎが祭りの始まりといわれています。
広い意味で捉えると、祭りとは人々の行い。どんなに暗い世の中でも、多くの知恵をもって行動すれば、明るい兆しが見えてくるというもの。明けない夜はないということですね。
「祭事」「神事」「神賑」の違い
現代でいう「お祭り」は、地域や学校の行事といった身近なものから、花まつりやひな祭りといった四季や文化にまつわるもの、神社やお寺が主体となる祭事や神事など、色々な形態の催しをいいます。
お祭りを開催する目的や意味はそれぞれ違うため、主催する側の事情や社会情勢により開催の有無、規模が変わってきます。お祭りは「まつりごと」「さいじ」ともいいますが、その違いを見てみましょう。
- 祭事(まつりごと・さいじ)
感謝や祈りを込めて神仏や祖先などをまつる行事、祭礼。
主体は様々。イベントの総称としても使われる。
- 神事(かみごと・しんじ)
神への奉仕、祈祷など厳粛に行われる儀式、祭祀。
神社の宮司が主体。
- 神賑(かみにぎわい)
人々に披露する目的で行われるもの。氏子などが主体。
また歴史をたどれば、天下を治める政治も「政:まつりごと」といいます。時の権力者が国を統治するという意味で定義され使われます。お祭りは主体となる人によって違いがあるということですが、ともなれば人間の行いはすべて「祭り」から始まるともいえますね。
お祭りの本来の意味とは
日本の文化として紡がれてきた様々なお祭り。昨今の自粛ムードで、賑わいを目的とした催しは縮小されていますが、本来の意味を失ったわけではありません。
例えば夏の花火も、美しさを楽しむだけでなく、納涼や景気づけ、鎮魂などの意味があります。盆踊りは先祖供養の意味があり、神事で家内安全、五穀豊穣、疫病退散を祈ります。人々の内なる思いや祈りが、営みとして表された形が「お祭り」ともいえます。
お祭りには「生きる力」が込められている
お祭りは単なる娯楽ではありません。人々の思いや願いに触れ、生きる喜びを分かち合い、地域社会との繋がるところ。その営みに、またたくさんの人を引き寄せ、知られる場所となるのです。
お祭りを通して今を語り継ぎ、知恵を集め、新しきことを生み出すきっかけになればと思います。
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