和食だけでなくどんなお料理にも合う日本酒。今やSAKE文化となり世界中で親しまれるようになりました。「日本酒」という言葉自体は明治時代から使われるようになりましたが、日本のお酒の起源ははるか昔にあります。
今回は日本におけるお酒のはじまり、その起源を探求してみましょう。
日本における最古のお酒
そもそも日本人はいつからお酒というものを飲んでいたのでしょうか。
起源は諸説ありますが、縄文時代中期(紀元前4000〜同3000年頃)にはお酒が造られていた痕跡が残っているそうです。
長野県の井戸尻遺跡にある土器の中に、ヤマブドウやキイチゴの種が発見されました。そのため日本で最初に造られたお酒はワインのような果実酒だったのではといわれています。
稲作の発展にみる日本酒の原点
では日本酒の原料となる米、稲作はいつから始まったのでしょうか。
考古学の研究から、約3万年前の石器や数千年前の地層に稲の栽培がうかがえるものが出土しています。そのため縄文時代以前には、既に稲の種まきが行われていたのではと考えられます。
古墳時代に田んぼが作られるようになり、弥生時代に水耕栽培の技術が日本列島に広まっていったようです。奈良時代のころには、稲作と同時に米原料の酒造りも発展したのではと考えられています。
歴史書にみる日本酒の原点
米を使った酒造りがいつ始まったのか確かな時期はわかっていませんが、古い歴史書には醸(かも)したお酒の記録が見られます。
- 古事記・日本書紀:「八塩折之酒」「醸しみ御酒」
- 播磨国風土記:「糆(かび)の米を醸ました庭酒(神酒)」
- 大隈国風土記:「口噛みノ酒」
奈良時代の記紀にある「八塩折之酒(やしおりのさけ)」はスサノオノミコトがヤマタノオロチを酔わせて退治したお酒で、醸した御酒といわれます。風土記には米の文字があり、この時代には既に米が原料のお酒が造られていたことがわかります。
麹(こうじ)で発酵させることを醸す(かもす)といいます。米を醸すことで醪(もろみ)ができます。昔のお酒は、この米を発酵させただけの「濁醪(だくらう・だくろう)」という、いわゆる醪が残ったままの「どぶろく」です。それを神々に供えて五穀豊穣を祈願していました。
日本酒の醸造の歴史
日本酒は本来、蒸した米に麹を入れるだけで、あとは木樽や蔵に棲みついている天然の酵母(こうぼ)の働きにより発酵してできあがります。
古来より米は命の源、神聖な食べものと考えられていたので、米からできるお酒も大変に貴重なものでした。
身分や貧富の差が生まれた飛鳥時代には、醪を沈殿させて上澄みをすくった部分は貴族に献上し、どろどろとした醪の部分は庶民のお酒として飲まれていたようです。
そのうち、醪を布で絞って漉す(こす)ことで、「にごり酒」と「酒粕」に分けるようになりました。にごり酒は特別な時にしか飲めないもので、貧しい者は酒粕をお湯で溶かした「槽湯酒(かすゆざけ)」しか手に入らなかったようです。
この「にごり酒」が、水のように澄んだ「清酒」になるのはもう少し後の時代です。
麹と酵母の働き
日本酒は、醤油や味噌、パンなどの発酵食品と同じように、麹(こうじ)や酵母(こうぼ)などの小さな微生物の力を借りてつくられています。麹や酵母はキノコやカビのような真菌類の一種で、人間の体内にも善玉菌があるように、良い働きをする菌の仲間です。
日本酒づくりにおける微生物の役割をご紹介します。
- 麹:生きた麹は、米のでんぷんをブドウ糖に分解することで、酵母を助ける働きをします。また、米のたんぱく質をアミノ酸へと分解し、日本酒特有の旨味・コクなどの味わいを生み出します。
- 酵母:ブドウ糖をアルコールと炭酸ガスに分解します。本来、各酒造に住みついている「蔵つき酵母」が主流でしたが、明治以降は安定供給のため培養された酵母が多く使われるようになりました。
- 常在菌:酵母のアルコール発酵の働きを助けます。元々酵母自体の働きは弱いため、それをサポートするのが常在菌です。自然豊かな山の空気や綺麗な川のあるところに酒蔵が残るのはそのためです。
酒造りの工程による呼称
現在一般的な日本酒は、蒸した米に麹と酵母を加え二重発酵させて醪(もろみ)をつくります。その醪を透明になるまで絞ってから火入れをし、瓶詰めにしてからもう一度火入れをして出荷されます。その造る工程においてできるお酒の呼び名があります。
醪酒
醪の状態のお酒を、「醪酒(もろみざけ)」「濁醪(だくらう・だくろう)」「濁酒(どぶろく)」といいます。
生酒
醪を絞った後に火入れをしていないお酒は「生酒(なまざけ・なましゅ)」といわれます。生酒と似た「生詰め酒」「生貯蔵酒」と表示されるお酒は火入れがされています。また同じ漢字でも「生酒(きざけ)」とよむものは混ぜ物のない純粋なお酒という意味になります。
にごり酒
絞る時にあえて粗く絞り白濁させたお酒を「濁り酒(にごりざけ)」といいます。が、今は絞る前のどぶろくのようなお酒も、絞った後から醪や澱(おり)を入れて白くさせたお酒も、白濁した酒の総称して「にごり酒」といわれることもあります。ちなみに雛祭りの白酒(しろざけ)は別の製法で造られた祝い酒のことです。
清酒と日本酒
「清酒」と「日本酒」は広義の意味でよく同じような意味で使われます。酒税法では、醪を絞って液体の原酒と固体の酒粕に分けたお酒を「清酒」と分類します。商品のラベル表示では、「清酒」は『米を醸造したお酒』のこと、「日本酒」は『国産米を使った国内で醸造したお酒』のことを指します。
日本酒は、原材料の違いや造り方の違いで、他にもたくさんの呼称があります。こちらの記事でもご紹介していますのでご参考ください。
日本酒・清酒発祥の地、奈良
奈良県は日本酒ゆかりの地、清酒発祥の地として知られています。春日大社には重要文化財である日本最古の酒殿があり、平城宮跡には飛鳥時代の律令制で置かれた造酒司の井戸が復元されています。
国策として日本酒が造られていた中世の時代、正暦寺では、近代の酒造りの基礎となる技術が確立されました。にごり酒を絞り、透明度の高い「清酒」が誕生したといわれています。
新酒の完成を祝う蔵開き
新酒は一般的に1年で最も寒い時期である12月~3月にできあがります。新酒ができたことをお祝いをするイベントが蔵開きです。お世話になった方や町の皆様に、今年も良いお酒ができたと知らせてお酒を飲み交わす蔵開きは新春の恒例行事となっています。
しぼりたての新酒はフレッシュで爽快な味わいで、初心者の方でも飲みやすいものが多くあります。蔵開きでは日本酒の飲み比べや普段入ることができない酒蔵の見学を行っています。他にも希少な限定酒の販売や屋台が並んだりするところもあり、お酒が好きな大人たちが楽しめるお祭りとなっています。
日本酒の熟成を知らせる杉玉
町を歩いていると、酒蔵や酒屋の軒にぶら下がっている杉玉(すぎだま)を見かけたことはありませんか。スギの穂先をボール状に造形したもので酒林(さかばやし)とも呼ばれます。2~3月頃、吊り下げたばかりの杉玉は緑色をしていますが、これは「新酒ができたよ」と知らせるもの。
杉玉は月日が経つと緑色から茶色へと変化します。杉玉の色は日本酒の熟成具合いを時期を知らせるシンボルとなりました。鮮やかな緑色は新春から初夏にかけての新酒、薄い緑色は夏酒、茶色になった秋は冷やおろしがおいしい季節になったという合図になります。
杉玉の起源は、奈良県桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)にあります。醸造安全祈願のために、三輪山の聖なる杉を玉にして飾ったのがはじまりです。それがいつしか全国に広まり、新酒ができた時に杉玉を飾るようになりました。
大神神社の拝殿向拝に吊るされる大杉玉は直径1.5メートル、重さ約250キロ。毎年11月14日は醸造安全を祈願して酒まつりが行われ、全国銘酒展や振る舞い酒が実施されます。祭典前に新しい杉玉に替えられ、祭典後にはしるしの杉玉が全国の酒蔵に配られます。
奈良豊澤酒造の新酒と熟成酒
奈良を代表する蔵元のひとつ、豊澤酒造がかつて酒造りをしていた時代の古民家をリノベーションした「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」。そのレストランルアンでは、滋味深い奈良の食材に合わせた地酒のペアリングが楽しめます。
秋は豊澤酒造の豊祝の「ひやおろし」、冬から新春は新酒「あらばしり」「にごり」がおすすめ。全国新酒鑑評会で何度も金賞に輝いた「大吟醸 豊祝 氷温一年熟成」や「しぼりたて生酒」などグラスからご用意しております。こだわりの季節酒をぜひご賞味くださいませ。
【奈良 ならまち】NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち
所在地 奈良県奈良市西城戸町4
問合せ TEL 0120-210-289 VMG総合窓口(11:00~20:00)
公式サイト https://www.naramachistay.com/
いかがでしたでしょうか。日本酒ゆかりの地、奈良では今でも地酒をつくるたくさんの酒蔵があります。酒蔵見学や利き酒体験をしながら、おいしい日本酒の旅をお楽しみください。
全国のVMGホテル・レストランルアンでも地酒や蔵元直送の日本酒などを提供しています。おいしい日本酒を味わいに旅の休憩やご宿泊にぜひ、ご立ち寄りください。
VMG総合窓口
(11:00~20:00)
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