今年も残りわずかとなり、大晦日、新年を迎えるために年末の大掃除やお正月の準備を始める時期になりました。お正月の行事には一つ一つ意味や縁起があります。今回は、邪気を払い福を呼ぶ、昔ながらのお正月の慣習や過ごし方を一挙にご紹介します。
お正月の由来と風習
お正月とは
日本は古くから万物に神が宿ると考えられており、その年の豊作や幸せをもたらす年神様は一年に一度、新年に訪れると信じられてきました。お正月は新しい年神様を迎え、幸せをいただくという風習です。お正月の行いをする期間にはそれぞれ名称があります。
- お正月
1月1日~1月31日。「正月」は1月の別の呼び名ともされています。
- 元旦
1月1日の朝。年神様は日の出とともに来られるといわれています。
- 元日
1月1日。1年のはじまりの日であり、年神様が家庭に訪れる日です。
三が日
1月1日~1月3日。三が日は初詣に行ったり、おせち料理を食べてゆっくり過ごすといった、一年のはじまりをお祝いする期間です。三が日に起きたことはその1年に影響するといわれ、やってはいけないこともあります。
やってはいけないこと
- 掃除をする
年神様が来ている福を払ってしまうため、良くないとされています。
- 料理をする
諸説ありますが、神様を休ませるために火や水は使わない方が良いとされています。
- 刃物を使う
刃物を使ってけがをしないように。また、刃物は縁を切るとされています。
- けんかをする
暴力や言い争いはもちろん、誹謗中傷や欺く行為も普段からしてはいけませんね。
- 散財する
基本的にお賽銭以外のお金はあまり使わない方が良いとされています。
松の内
関東:1月1日~1月7日、関西:1月1日~1月15日。
年神様が家庭に訪れる期間。 松の内を過ぎると年神様が帰られるため、お正月飾りを片付けます。 他にも松の内を境に変わることがあります。
- 挨拶「あけましておめでとうございます」→「今年もよろしくお願いします」
- 年賀状 → 寒中見舞い
- 掃除はしてはいけない → 掃除をしてもいい
小正月
1月15日または1月14日~1月16日。
新年が明けて最初の満月のことを指します。また、小正月には邪気を払うために小豆粥を食べます。 1月14日、15日には左義長を行います。左義長はどんど焼きともいわれ、お正月で使用した縁起物やお正月飾りを燃やす火祭りのことです。
二十日正月
1月20日。
お正月の祝い納める日。仕事始めの日とも言います。女性がお正月の祝いを終えて里帰りをして一息つけるので「女正月」、お正月の飾りや料理を全て片付けてお供え物の魚を全て食べるので「骨正月」とも言われています。
お正月の祝いを納める慣習は地域によって異なります。関東以北は松の内(1月7日)であるのに対し、関西は小正月や二十日正月に行います。
忙しい現代人は、なかなか昔の通りにはいかないこともありますね。それでも、心に留めておくだけでも何かのお役に立つかもしれません。
それでは、良い年を迎えるために、前年に行うお正月の準備からご紹介します。
年賀状
年末年始の挨拶を直接できない遠方の方に出していた手紙が年賀状の始まりです。一年の感謝とともに新年のご挨拶を書きます。
年賀状は11月から販売されています。年内にポストに投函すると元旦または三が日に年賀状を届けてもらえます。年賀状を年明けに投函する場合は松の内である「1月7日まで」です。松の内を過ぎると「年賀状」ではなく、「寒中見舞い」になります。最近は年賀状をはがきではなく、SNSやチャットなどインターネットでご挨拶する人も増えていますね。
大掃除
年神様を迎える準備の一つが大掃除。旧年となる一年の汚れを綺麗にして新しい年神様を迎えます。
大掃除をする日ですが、12月29日は「二重苦」という語呂になり縁起が悪いので避けた方が良いとされています。またお葬式準備の「一夜飾り」と同義になるような12月31日の一日だけで大掃除をするのも縁起が悪いとされています。余裕を持って少しずつ大掃除を始められると良いですね。
お正月飾り
大掃除が終わったら、年神様を迎えるためのお正月飾りを始めます。一般的には12月28日までに飾ると良いとされています。年内の買い出しやおせち料理の下準備もこのころに済ませておくと安心です。
門松
年神様が家庭に訪れる際に目印となるよう門戸に飾ります。神様の依り代となる門松は、大きくても小さくても良いといわれます。心持ちが大切ということです。
しめ縄
神様の領域と私たちが住む領域を区切り、神聖な場であることを示しています。不浄なものが入らないようにする結界の役目を果たします。一般的には玄関前や、車両に飾る場合もあります。
鏡餅
神棚や床の間などに飾るお供え物。また、年神様が宿る場所ともされています。松の内に年神様を送り、お正月の祝い納めとするのが「鏡開き」です。年神様が宿っていた鏡餅をいただき、無病息災を祈ります。
大晦日
大晦日は一年最後の日。いよいよ正月を迎える前日です。
年越しそば
そばの麺が切りやすいことから「今年の厄を断ち切る」、細く、長いことから「健康・長寿」の意味で縁起が良いとされています。大晦日の夕食には年越し蕎麦というご家庭が多いです。
カウントダウン
海外では大晦日はカウントダウンイベントで花火が上がったり、恋人や友人たちとにぎやかに過ごします。今では日本でも盛大にカウントダウンイベントが行われていますね。
除夜の鐘
年の瀬から日の出前にかけて、お寺では人の煩悩の数を示す108つの鐘がつかれます。鐘をつかせてもらえるところもありますのでお近くのお寺をチェックしてみてください。
お正月
日付が変わり、新しい年の始まりです。
初日の出
年神様は朝陽とともに訪れます。高台や展望台、山頂でご来光を浴びて、年神様に今年の幸せを祈るのも良いですね。清々しい一年の始まりです。
初詣
初詣・初参りは、神仏に旧年の報告や感謝を伝え、新年の幸せと無事を祈ります。年神様がおられる松の内までに行くと良いといわれます。初詣が終わった後は寄り道せず家に帰ると、よりご利益をいただけますよ。
初詣は神社、お寺のどちらでも構いませんが、参拝方法が異なりますので事前に確認しておくと安心です。
関連記事:【作法】初詣に知っておきたい神社・お寺の参拝方法と基礎知識
関連記事:お正月の初詣はどこ行く?初参り神社スポット22選
おみくじ
初詣の後は、おみくじをして一年の運勢を占いたくなりますよね。最近は動物モチーフの陶器に入ったおみくじや水にぬらすと運勢が浮き出るといったおみくじなどユニークなものもあります。
引いたおみくじはお守りとして持って帰るか、おみくじかけがある社寺には結んで帰ると良いそうです。もし良くない結果が出た時は利き手と反対の手で結ぶと良いそうですよ。
正月料理
おせち料理
起源は旧年と新年の年神様へのお供え物というおせち料理。かまどの神様が休めるように、また普段料理を作っている方も休めるように、大晦日までに作って正月の三が日までいただけるように保存がきくお料理が基本です。家族の健康長寿、子孫繫栄といった意味を込めた縁起の良いお料理がたくさん入っています。
関連記事:おせち料理の中身はすべて縁起もの。具材の意味と御節供のはじまり
- お屠蘇(おとそ)
新年には健康長寿や幸福祈願のためのお酒を飲みます。純米酒で代用する場合もありますが、本来のお屠蘇は、漢方薬などを混ぜた屠蘇散(とそさん)を漬け込んだ清酒を指します。
- お雑煮
お供え物のお餅や自然の恵みを入れて食べることで年神様の力を頂くという意味を持っています。地域によって澄ましや味噌仕立てなど、味や具材が異なるのもお雑煮の面白さですよね。
- 若水
年が明けて初めてくむ水のことです。年神様への供え物で使う水、お雑煮などは若水を使います。昔は山の湧き水や井戸水でした。正月に使う水にまで名前があるなんて、水の民、日本らしい情緒ですね。
正月にまつわる事柄
初夢
元日の夜から1月2日の朝にかけて見る夢のことを指します。一富士、二鷹、三茄子を見ると縁起が良いとされていますね。他にも朝陽を見る夢や太る夢も縁起が良いそうです。
書き初め
年神様がおられるとされる恵方に向かって祝いの言葉や一年の抱負を書にしたためます。一般的には新しいことを始めると良いとされている1月2日の事始めに行います。
お年玉
昔はお餅を配っていました。お年玉の由来は年神様の魂が宿る餅玉の「御歳魂」からきています。年神様の魂が宿るとされる鏡餅を家族に分け、家族の無事を祈っていました。時代とともに今はお金に替わりました。
正月遊び
- 羽根つき
羽子板で羽根をつく音で邪気を払えると信じられ、長く打ち合うことが良しとされ、江戸時代から遊ばれていました。負けると顔に墨を塗る罰ゲームは実は魔除けの効果があるといわれています。
- 凧揚げ
凧を高く揚げれば子どもが元気に育つや願い事が神様に届くとされています。高く揚げて遊ぶだけではなく、連続して揚げる連凧や、相手の凧を落とす凧合戦などの遊び方もあります。
- かるた
かるたには、ことわざが書かれた「いろはかるた」、小倉百人一首が書かれた「百人一首かるた」などがあります。いろはかるたは地域によって書かれていることわざが違うところが面白いですね。百人一首かるたには坊主めくりという遊び方もあります。
- 福笑い
「笑う門には福来る」ということから福笑いは縁起がいいことで正月に遊ばれます。目を閉じて作ったひょっとこやおかめの顔はとても面白いです。自分たちでオリジナルの福笑いを作って遊ぶのも面白そうですね。
- コマ回し
コマの回る音で邪気を払う、物事が円滑にまわるという縁起の良い意味があります。紐を巻いて回すコマはちょっとコツがいります。上手に長く回せると気持ちがいいですよ。
七草粥
伝統的に行事が行われる五節句の一つ、七草粥は、1月7日の人日に食べます。七草粥はお正月に色々食べて疲れた胃腸を休め、一年の健康を祈るという意味があります。春の七草は、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ です。
関連記事:一年の無病息災を祈って食べる七草粥。春夏秋冬ある季節の七草
いかがでしたでしょうか。お正月にはたくさんの行事や慣習があり、それぞれに由来や意味があるのは面白いですね。お正月の本来の意味を知るだけで気分がより高まります。師走から年末年始は何かと忙しい時期ですが、伝統的な慣習を少しでも取り入れてお正月を過ごしてみてはいかがでしょうか。
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